久正人 - ジャバウォッキー
黒ベタを多用したレトロ・チックな絵がイカす、19世紀末を舞台にしたスパイ活劇。ただし、主人公のスパイは女性と恐竜人だ。
この世界では、直立二足歩行する人型の恐竜が、人の社会に紛れ込んでいるのである。
過去を舞台にしたSF的な小説ではよくある作り込みではあるが、実在の人物や歴史的な事件が複雑に絡み、そこから独自の歴史解釈に展開していくダイナミックさは見事。
実はあの人物は。実はあの事件の真相は。
直立二足歩行する恐竜という独自の設定が、派手なアクションと共に、歴史の真相を掘り起こしていくのである。
こういうイラストっぽい絵が描ける漫画家はそれだけで貴重だが、細やかなストーリーの裏設定といい、ハード・ボイルドなセリフ回しといい、マニアックな少年心をこれでもかというほど刺激してくれる。
萌がすっかりはびこった昨今の漫画界では、かなり珍しい漫画家だと思う。
いや、しかし。
確かに珍しいタイプではあるし、絵や設定の大人びた感じは、少年マンガというよりは青年漫画っぽい。
けれど、根本的な物語のテンションは、少年マンガ独特のワクワク感を強く維持しており、個人的には、望月三起也氏に結構近いマインドを感じるのだ。
一方で、イラストとしての完成度や、たまに入るギャグのセンスは、鳥山明氏の系譜も感じさせる。
これはおそらく、一見、異色な漫画に見えながらも、実はアクション少年漫画の本道を走っている作品だ、ということなのだろう。

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