青木雄二 - ナニワ金融道
最初、なんて下品で下手な絵だろうと思った。
この絵でどんな話を描いているんだと、最初から呆れ返って読み出してみたら、眼から鱗がばらばらと何十枚も落ちた。
とんでもなく面白かったのだ。
この驚きは、私の漫画に対する考えを大きく変えた。
美しい絵も、洗練された絵も、不要な漫画がある。
漫画で最も重要なものはアイデアと物語であり、絵は、アイデアと物語を生かすためにある。
ならば、アイデアと物語を生かす絵であるなら、むしろ下品で下手なほうがいい場合もあるのだ。
言葉にすれば当たり前なことも、実際にそれを証明する作品に出会わなければ、机上の空論である。
しかし、この作品がそれを証明していた。
青木は、登場人物の名前や、登場人物の背広、背景の小さな店舗の名前にも、わざわざ下品なシモネタを持ち込んだ。
どこの世界に、重要な登場人物に「肉欲 棒太郎」などという名前を付ける作者がいるのだ。
実は作者は、漫画家になる前、大阪でデザイン会社をやっていた。
絵は下手でも、デザインは分かっている人だった。
この作品に必要なのは、洗練ではなく、いかがわしさをかもし出すことだと、青木は確信していたのだ。
女性には読み辛い漫画だとは思うが、これは全ての大学生、社会人が読んでおくべき漫画だと、私は思う。
何故ならこの漫画には、人に騙されないために、金のトラブルの解決のために、知ってて損の無い情報が、惜しげもなく満載されているからだ。
これは漫画であり、同時に実用書である。
そして、その実用書としてのレベルが、異常なほど高い。
常識外れの下品さは小脇に置いて、ぜひ読んでおくべきだ。
貴方が何時の日か、詐欺師に騙されないために。