Bob Ross - The Joy of Painting

11月 3 2015

このシリーズを初めて観た時は衝撃的でした。
それまでの「絵を描く」ことの、自分なりに積み上げてきた方法論が、崩れ去ったかのように感じたものです。

Bob Rossの描く絵は、格別に名画というわけではありませんが、素人目には十分に「上手い絵」です。
「絵心のある人が何日もかけて描いたのだろうな」と思わせる程度には素晴らしい。

ところがBob Rossは、それをわずか30分程度のTV番組で、描き上げてしまう。
しかも、描き方を全て見せている。

Bob Rossの技法は、決して難しいものではなく、ある程度絵心がある人なら十分にマネ出来るものです。

キャンパスには下地の色を塗り、乾く前に絵を描き始める。
極力大きなブラシの断面を巧く活かし、油絵の具をさっさとキャンパスに乗せていく。
ある程度乗せたら大きな刷毛で余計な絵の具を取り除き、その刷毛でキャンパス上を軽くぼかしていく。
原則、奥にあるものから描き、手前にあるものには細かい筆やペインティングナイフでハイライトを付けていく。
ハイライトも刷毛で軽く擦ることで馴染ませ、その上に更に強いハイライトを置くことで立体感を強調する。

これをキャンパス上に配置したモチーフ毎に繰り返すだけで、みるみる絵が出来上がってしまう。

彼は絵を描くとき、モデルを使いません。
写真すら見ない。
つまり、描いているのは、彼の頭のなかにあるモチーフの組み合わせです。

草原、海岸、波、雲の連なり、岩、樹木、林、草のかたまり、水面、鳥や人のシルエット…。

こうしたものを組み合わせ、パターン化した絵画を頭の中で組み立てて、それをキャンパスに描くだけです。
それぞれの描き方、光の付き方、影やハイライトの付け方を一度理解してしまえば、いくらでもこの組み合わせは量産出来てしまいます。

絵の中に小さな矛盾が生じていても、絵を眺める者には、その矛盾など分かるはずもない。
「こういう絵の手法なのだ」と思うだけです。

Bob Rossが芸術家なのか、芸人なのかは、評価が分かれるでしょう。
けれど彼は、自称芸術家の作品とほとんど見劣りしない作品群を量産してしまっています。
優れた絵画職人であることだけは確実です。

そしてその技法は公開されており、おそらく誰にでも習得可能です。

技法を習得した人全てが同等の絵を描けるとは限らないものの、絵を描くことのハードルは、Bob Rossによって確実に大幅に下げられたのです。

リリース: 
1983年

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買い物の金額は変わりません。

コメント

ユーザー ちゅん の写真

実は現在、The Joy of Paintingの動画が403本、計約200時間分、無料配信中です。
期間は11月6日(おそらくアメリカ時間でですが)まで。

ただし、これを見逃した人も、YouTubeで「Bob Ross」で検索すれば、結構な量の動画が観ることができます。

観たことがなくて、絵を描いてみたいと思っている人は、絶対に一度、観ておくべきです。

ユーザー ちゅん の写真

いくつかYouTubeにあるサンプルを貼っておきます。


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