NSP - 冷蔵庫に入れるもの
♪ヨーグルトの隣にこの気持ち 並べておけたら安心したけど
♪いつかは腐ってもしかたない だけどあと少しもう少しだけ
NSPが復活後に出したアルバム「Radio days」の中の1曲。
出会って、別れて、それでも出会えたことに感謝している詩が切ない。
この曲に込められた思いを推測するのは難しい。
シンプルに考えることもできるが、深く考えれば、いくらでも深く陥ってしまう。
それは天野滋にとって、このアルバムが、最後のアルバムになってしまったからだ。
彼らはかつて叙情派フォークを代表するグループであっただけに、彼らには失恋を歌った曲が実に多い。
だが、「Radio days」に収められた曲の詩は、どれも意味深だ。
失恋や愛を歌った曲も、普通では使わないような言葉が多く散りばめられており、形としては恋を扱った曲であろうと、もっと深い意味を、二重三重に用意しているのではないかと思えてならない。
このアルバムに取り掛かった頃は、彼らは再結成に強い意欲を感じていたはずだ。
しかし、アルバム製作中に、天野の大腸癌が発覚する。
療養を取るかライブを取るかの選択を迫られ、天野はライブを取ったが、当時のライブでは、天野の具合の悪さは客席にも伝わるほどだった。
そして、アルバム発売から5ヵ月後、天野は脳内出血で亡くなる。
天野は「Radio days」の次のアルバムの構想を用意していたと聞く。
だが、次のアルバムに手を付けることは出来なかった。
おそらくは、次が無いことを、彼は頭の隅で悟っていただろう。
それだけに、天野がこのアルバムに込めたものは、ずっしりと重いはずだ。
歌詞に刻まれた言葉の深さが、シンプルでいて凝ったサウンドが、その重みと熱さを伝えてくる。
NSPに出会って、別れて、そして再会して、また別れた。
次の再会は無い。
けれど、NSPに出会えたことで、私にとっての音楽は、少し意味が変わったと思っている。
私はトータルでは、彼らのファンであった期間は、ごく短い。
けれど、出会えたことに、今も強く感謝している。
コメント
(件名なし)
貼っていた動画が消えていたので差し替えました。2015/11/20