NSP - 冷蔵庫に入れるもの

10月 9 2013

ヨーグルトの隣にこの気持ち 並べておけたら安心したけど
いつかは腐ってもしかたない だけどあと少しもう少しだけ

NSPが復活後に出したアルバム「Radio days」の中の1曲。
出会って、別れて、それでも出会えたことに感謝している詩が切ない。

この曲に込められた思いを推測するのは難しい。
シンプルに考えることもできるが、深く考えれば、いくらでも深く陥ってしまう。

それは天野滋にとって、このアルバムが、最後のアルバムになってしまったからだ。

彼らはかつて叙情派フォークを代表するグループであっただけに、彼らには失恋を歌った曲が実に多い。
だが、「Radio days」に収められた曲の詩は、どれも意味深だ。
失恋や愛を歌った曲も、普通では使わないような言葉が多く散りばめられており、形としては恋を扱った曲であろうと、もっと深い意味を、二重三重に用意しているのではないかと思えてならない。

このアルバムに取り掛かった頃は、彼らは再結成に強い意欲を感じていたはずだ。
しかし、アルバム製作中に、天野の大腸癌が発覚する。
療養を取るかライブを取るかの選択を迫られ、天野はライブを取ったが、当時のライブでは、天野の具合の悪さは客席にも伝わるほどだった。
そして、アルバム発売から5ヵ月後、天野は脳内出血で亡くなる。

天野は「Radio days」の次のアルバムの構想を用意していたと聞く。
だが、次のアルバムに手を付けることは出来なかった。
おそらくは、次が無いことを、彼は頭の隅で悟っていただろう。
それだけに、天野がこのアルバムに込めたものは、ずっしりと重いはずだ。

歌詞に刻まれた言葉の深さが、シンプルでいて凝ったサウンドが、その重みと熱さを伝えてくる。

NSPに出会って、別れて、そして再会して、また別れた。
次の再会は無い。
けれど、NSPに出会えたことで、私にとっての音楽は、少し意味が変わったと思っている。
私はトータルでは、彼らのファンであった期間は、ごく短い。
けれど、出会えたことに、今も強く感謝している。

リリース: 
2005年

コメント

ユーザー ちゅん の写真

貼っていた動画が消えていたので差し替えました。2015/11/20


enlightened私も好き♪/嫌い」への投票は、ユーザー登録なしでもできるようになっています。
ただし、トップページのように、本文の一部しか表示されていない場所では投票できません。
タイトルもしくは「この続きを読む」をクリックして、全文を表示させてから投票してください。
投票は、実際に視聴したことのある作品に対してのみ行うようにしてください。
ユーザー登録なしでの投票は、通常、約24時間後に反映されます。