Alfons Maria Mucha - The Slav Epic

9月 29 2013

ミュシャは、アールヌーボーを代表するイラストレーターであり、グラフィックデザイナーである。
彼の製作した多くのポスターには、草花、宝石、星等で飾られた、モダーンで肉感的な女性が、ヌーボー独特の美しい曲線と共に描かれている。

彼は、純粋美術とは異なる、印刷を前提としたデザインの世界を開拓した、当時最も優れたデザイナーだった。

彼は名声を得る前、パリの印刷会社で働いていたが、ある日、いきなり芝居のポスターを依頼される。
彼の腕を見込んでの注文ではなく、とにかく時間が優先で頼まれた仕事だった。
彼は大急ぎでデザインをまとめ、イラストを描き、ポスターを製作した。

そのポスターが大評判となった。
ポスターに描かれた舞台女優、サラ・ベルナールは実に美しく、ミステリアスだった。
芝居も当たった。
彼は一夜にしてパリを代表する作家となった。
サラはミュシャと専属契約し、以降、サラの芝居はミュシャのポスターとセットとなった。

彼の大胆で繊細なデザインセンスは、私がまだ若い頃にも多くの人に愛されていたし、今年の春の六本木のミュシャ展も、多くの来場者で賑わっていた。
私の見たところ、来場者の多くは40~50代の女性だったが、ごく若い方や男性も、女性だらけの会場に混じり、懸命に作品を鑑賞していた。

ミュシャ展で、最も大きな収穫だったのは、彼の晩年の作品の素晴らしさに接することができたことだ。

彼はオーストリア帝国領モラヴィアで生まれた。
現在のチェコである。
彼はウィーンで学び、パリで人気作家となったが、当時、彼の故郷は政治で大きく揺れていた。
彼はある日、人気作家であることを捨て、祖国で母国の為の作品を作ることを決意する。
そうして製作されたのが、20点の絵画からなる「スラヴ叙事詩」である。

スラブ民族の歴史を描いたこの作品群の製作には、20年を要した。

小さな画面では、この壮大な絵画を正当に評価することは難しいと思う。
ミュシャ展で観た迫真と壮麗に、私はまさに打ちのめされ、同時に大きな癒しを味わった。

彼のポスターはどれも素晴らしい。
その素晴らしさを称えるのに、いくら饒舌であっても足らないほどだ。
だが、「スラヴ叙事詩」の素晴らしさは、全く言葉にできない。

リリース: 
1912年

enlightened私も好き♪/嫌い」への投票は、ユーザー登録なしでもできるようになっています。
ただし、トップページのように、本文の一部しか表示されていない場所では投票できません。
タイトルもしくは「この続きを読む」をクリックして、全文を表示させてから投票してください。
投票は、実際に視聴したことのある作品に対してのみ行うようにしてください。
ユーザー登録なしでの投票は、通常、約24時間後に反映されます。