長谷川裕一/徳冨数志 - まんがのCOCOはキケンなつぼみ!
アマチュアレスリングのホープ、美園つぼみが、同級生、描紀巧の漫画原稿をたまたま読み、感動し、漫画研究会に入る。
おりしも外資系の会社が、大々的な漫画家発掘イベントを開催。
つぼみや巧達は漫研としてイベントに参加するが、そこで出された課題とは…。
この漫画、ラブコメ漫画の「お約束」の詰め込み方が半端ではない。
まずは冒頭、巧は高校初登校の自転車通学中に、トーストを咥えたつぼみにぶつかる。
つぼみは何者かから追われていた。
自転車の二人乗りで逃走し、学校に到着したとたん、自転車が転倒。
倒れる際、巧の顔はつぼみの胸の谷間に埋まる。
このようにお約束の数々が消化されていくが、まずぶつかる際、つぼみは走っていたのではない。
上から飛び降りてきたのだ。
つぼみを追っていたのは、実はつぼみの家族である。
巧の顔がつぼみの胸の谷間に埋まったにも関わらず、動揺するのは巧だけで、つぼみは顔色一つ変えない。
スピーディーにお約束を消化しつつ、意図的にお約束パターンを壊していくあたり、実に確信犯である。
また、なんでレスリングから漫画なのかとか、漫研メンバーのキャラクターの濃さとか、突っ込みどころも意図的に満載していて、その前向きなネタの詰め込み方に思わず感心してしまった。
だが、私が最も感心してしまったのは、漫画家発掘イベントで、彼らに課せられた最初の課題である。(あまりにネタバレだけど、これは書くしかない。ごめん。)
簡単なストーリーの一部を指定されたうえで、『以上を漫画にしたものを「コマ割り」だけで表現せよ』というのだ。
これは深い。
本気で考えるなら、これはまさに漫画の本質に迫る課題である。
(もちろん、呆れても構わない気もするが。)
仮に同じアイデアは出せたとしても、長谷川裕一というベテラン漫画家でなければ、このあたりの描写に、これほどの説得力は持たせられなかったのではないか。
軽いノリだが、実はかなり凄い漫画だと思う。