西尾維新 - 化物語

9月 23 2013

化け物…怪異の話であり、怪異に化かされる話である。
化け物に取り付かれて大変な状況となった男子主人公が、化け物に取り付かれて大変な状況になった女子を助けては、また更に大変な目に遭う、という物語。

西尾の物語は、常に「語られる」ことによって成立する。

西尾は「語る」ことに拘る。
作品の中には、常に膨大な量の言葉遊びがあり、登場人物の名前も、常に言葉遊びの範疇だ。
そして、西尾の小説は、ほぼ常に一人称によって進行する。
主人公は、常に思考し、独り言を語り続け、更にはボケとツッコミを一人で行う。
(もちろんボケとツッコミが別の人物である会話もある。)
膨大な独り言めいた語りの量は、ある時はストーリーの進行が無いまま数十ページも続く。
にも関わらず、それは読者にとって至福の時間である。

いやたまに、ついていけんなーという時もあるのだが、延々笑いが止まらない時の方が多い。

ライトノベルとは、限りなく漫画に近い小説なのかもしれない。
しかし、この膨大な語りの量は、絵が中心の世界では、明らかに描きにくい。
彼は小説家に、成るべくして成ったのだ。

ところが。

驚いたことに、この語りの膨大な作品が、2009年にアニメ化され、その語りのほとんどがアニメにも生かされてしまった。
この無謀な挑戦に驚き、そしてその無謀が成功していることに、更に驚いた。

原作の美味しい部分をしっかり絵として消化しつつ、更に絵ならではの特異な表現に昇華していた。
もちろんこれは、原作の凄さ以上に、アニメ化スタッフが凄いのだが。

いやー、アニメって進歩してるんだな、と本気で思った瞬間だった。

西尾の小説は、四半世紀昔なら、小説として、認められなかったかもしれない。
それぐらい、昔の小説とは全く流儀が異なる。
だが、面白い。

私は、若い頃の筒井康隆や山上たつひこの異才を、彼に感じる時があるのだが、それは彼にとって褒め言葉なのかどうか。
いや、戯言でしかないか…。

リリース: 
2005年

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