森薫 - エマ

7月 25 2013

19世紀末のイギリスを舞台に、メンドのエマと、上流階級の跡取り息子、ウィリアムとの、身分違いの恋を描く。

二人の純粋で、しかしすれ違いがちな恋愛と、その心理描写。
その背景となるヴィクトリア朝のイギリスの細やかな風俗描写。
この2つが、このコミックの柱と言える。

森はこのドラマを「単なる女性向け恋愛大衆小説」にしないために、少々特殊な設定を持ち込んでいる。

エマの主(あるじ)ケリーは元教師であり、エマに十分な教育を与え、エマを半ば養女として育てていた。
そのためエマは、身分に見合わない高い教養を持ち、階級社会の厳しさから比較的守られて育ってきたのだ。

また、ウィリアムの母には社交界嫌いの女性を当て、階級社会の病理を描くと共に、ウィリアムの身分違いの恋に対する理解者とした。

こうした設定が、ドラマの教養素地を押し上げると同時に、ドラマが流れやすく、読者が共感しやすい状況を、たくみに作り上げている。

とはいえ、私がこの作品を特に素晴らしいと感じるのは、森の、当時の風俗に対する細やかな愛情である。
森は、主人公達以上に、当時の様々な風俗を、丹念に描きたくて仕方が無いのだ。

だからこそ、水晶宮のシーンは感涙ものだ。
ヴィクトリア期ならではのロマンチックなロンドンを堪能できる。

リリース: 
2002年

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