ミドリカワ書房 - 誰よりもあなたを

10月 3 2013

みそ一丁 しょうゆ一丁 と叫んで
額の汗をぬぐった彼は

さわやかそうな恋愛の歌だなと、おそらく思うはずだ。
初めて聴いたときは、多くの人が、そう勘違いしてしまうはず。

だが、途中から次第におかしくなってくる。
これは単純な恋愛の歌なんかじゃない。
だって、ミドリカワ書房なんだから。

書房となっているが、本屋ではない。
本名は緑川伸一。
列記としたシンガー・ソングライターである。

だが、彼の作る曲はかなり特殊だ。
「音楽を作る」という枠では彼を語ることは出来ないし、彼はヒットする曲を作りたいとは、あまり思っていないようだ。

彼の作る曲には、共感できる物語と毒がある。
その物語は、いわゆる恋愛の話ではなく、恋愛以上に、もっと内面に踏み込んだ、よりプライベートな物語である。

引きこもり、ストーカー、恍惚の人、不細工で整形したい、離婚、万引き、逮捕、欝、いじめ、風俗、DV…。
こうしたテーマを易々と扱えるシンガー・ソングライターは、日本に何人いるだろう。
彼ぐらいしかいないのではないだろうか。

そうした複雑な、歌よりも、週刊誌や新聞が取り上げそうなテーマを、少しの毒と少しの笑いを混ぜて、彼は真剣に歌にする。
これは決してギャグではない。
歌詞では笑い飛ばしながらも、彼の視線は確実に本気である。

彼のクールな視線は、普通の人には毒としか、あるいは冗談としか思えないかもしれない。
けれど、冗談であれ、本気であれ、こういう作品を作れる人を、私は大切にしたいと思う。

彼の歌を聴いて思い出したのは、かつてのラジオの深夜番組だ。
パック・イン・ミュージックやオール・ナイト・ニッポンなど、多くのパーソナリティーが、ある時は笑いを、ある時は涙を、音楽を、多くの共感を電波に乗せて流していた。
ミドリカワ書房の作品群は、深夜番組への投稿に似ている。
もしかしたら、彼はシンガー・ソングライターというよりも、放送作家の方が近いのかもしれない。

リリース: 
2008年

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君は僕のものだった

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