ジョン・ダニング - 死の蔵書
本好きには堪えられない、絶品の推理小説。
腕利きの「古書掘り出し屋」が殺される。
刑事のクリフは、貧乏だったはずの被害者が、とんでもなく高い価値の蔵書を持っていたことに気付き、疑問を感じる…。
古本の中には、様々な理由により、とんでもなく高価な値が付くものがある。
発行部数が極端に少なかったとか、著者のサインが入っているとか、特別仕様の装丁がされているとか、そういう理由だ。
一山いくらの本の中から、こういう本を探し出せば、価値を理解する者に高く売れる。
そういう商売が「古書掘り出し屋」だ。
これは最近、日本では「せどり」と呼ばれることが多い。
希少本の情報をより精緻に持てば、それだけで食っていける。
だが、希少本はそうそう転がってもいないから、半分以上は運次第の商売だ。
さて、刑事クリフだが、彼もまた希少本の世界には詳しかった。
本好きが高じて、マニアの部類に足を突っ込んでいたのだ。
彼は本好きのマニアックな知識を元に、犯人を追い詰めていく。
ジョン・ダニングの文章は(もちろん日本語訳での話ではあるのだが)、とても読みやすく、しかも本マニアならではの知識があちこちに埋め込まれていて、飽きさせない。
ミステリーとしても、ハードボイルドとしても絶品である。
ちなみにこのクリフ。続編では刑事を辞めて、古本屋になってしまう。
まさにマニアが更に高じてしまったのだ。
しかし、古本屋になってもなお、古書を巡るミステリーからは逃げられない。
謎解きに、ハードボイルドなアクションに、読者ははらはらし続ける。
本が好きな人、ミステリーが好きな人、ハードボイルドが好きな人。
そんな貴方なら、このシリーズは全てお勧めだ。