よしながふみ - ソルフェージュ
よしながのマンガは、たいてい、腐か食い気だ。
はっきり言って、腐なマンガは苦手だし、よしながの冷たい描線は、少々しんどいとも感じている。
けれど、よしながのマンガは読むべきものだ。
「大奥」で大ブレークしたよしながだが、ここではあえて「ソルフェージュ」を紹介しておきたい。
合唱指導の才能はあるが、あまりやる気のない音楽教師、久我山。
彼の許に、音楽学校に進みたいと相談してくる生徒がいた。
生徒の名は田中吾妻。
田中は母親とはうまく行っておらず、大きな体躯の割に精神的に幼く、いつしか久我山に頼り切るようになる。
頼ってくる田中をなんとかしてやりたくて、久我山は教師の使命に目覚めるが、久我山にはゲイという問題があった。
で、色恋沙汰と葛藤、別れ、そして月日が流れた後の再開が、この連作マンガの中で描かれる。
よしながのマンガは、腐であり、ゲイのマンガだ。
だから、腐に多少なり免疫がないと、読むのはしんどいと思う。
けれど、よしながの描く恋愛は、腐をモチーフにしながらも、もっと根本的な愛を描いている。
そこが普通の腐女子のマンガとは異なる。
もっとリアルで、切実で、ここには男だから女だからという意識以上に深い人間性(人間の性)が描かれている。
ソルフェージュの連作の中、何度もちょい役を務めながら、最終話で大きな役割をする女性がいる。
あえて名前はここには書かない。
私は彼女の愛情が、一番心に染みた。
おそらくこの物語に感動した人は、共感してくれると思う。