すぎむらしんいち/リチャード・ウー - ディアスポリス 異邦警察
東京の密入国外国人達が、より悪質な犯罪から身を守るために、異邦都庁を作る。
当然違法な秘密組織であり、そこには未認可の病院や地下銀行があり、擬似警察…異邦警察も抱える。
その警察の唯一の警察官、久保塚早紀の活躍を描く。
暴力シーンも多く、必要悪のようなものとはいえ、違法活動を描く漫画だけに、誰にでも勧められる漫画ではない。
だが、私はこの漫画が結構好きだ。
それは久保塚早紀の性格設定が大きい。
彼は一見無責任でいいかげんな性格に見えるが、実は人情家であり、内面は正義感に溢れている。
世の中の二面性を理解したうえで、弱き者を助けたいと、本気で思っているのだ。
警察と言ったところで、所詮用心棒兼相談役みたいなものだが、彼は時に命をかけて、人を助けようとする。
途中から彼の部下となる元銀行マンの大食漢は、銀行時代に上司から50億円の横領の罪を着せられ、仕方なく地下に潜る。
小心者だが善人でオタク。
彼の存在が、この漫画の殺伐さをかなり緩和してくれている。
密入国外国人たちの描写も、共感できる面が意外と多い。
彼らは自分たちの違法性を理解しつつ、しかし生活のために違法に目をつぶっている。
もちろん、ずるい面もあるが、人間とは、まぁ、そういうものだろう。
すぎむらしんいちの絵は、乱暴で粗野な描線だが、ときにコミカルで、優しい。
その優しさが滲む瞬間が、私はたまらなく好きだ。