星野之宣 - 宗像教授伝奇考

10月 31 2013

禿頭の中年が主人公の漫画というのは、かなり珍しいと思う。
しかも黒のスーツに黒マント、黒のソフト帽にステッキ付き、さらには口髭も蓄えている。
いつの時代だと言いたくなるが、舞台は現代。彼は大学の考古学者である。

一つ間違えば時代錯誤のギャグになりかねないスタイルだが、この主人公、めっぽうカッコいい。
頭は切れ、体力もあり、女性に対しては紳士であり、なにより、行動力がある。

だから渋い。ダンディーと言ってもいい。
昔のシネマは、こういうダンディーで渋いおっさんの宝庫だったものだ。

彼は大学で考古学を教える傍ら、年中各地を歩き、遺跡を調べ、各地に点在する伝説を集積し、古代や神話について、大胆な仮説を構築する。
その仮説には超能力やモンスターなども含まれ、伝奇SFめいている。

だが、丁寧に謎を追えば、そういう結論にならざるをえない。
何故なら、彼が調べる遺跡を巡って、いつも実際に、様々な怪異が起きるからだ。

そうした怪異を解きほぐし、巻き込まれた人を助けることも、彼にとって、半ば使命と化している。

このドラマの組み方は、諸星大二郎の「妖怪ハンター」によく似ている。

実際のところ星野は、宗像教授シリーズを組み立て始めたとき、妖怪ハンターを参考にしたという。
伝奇的ストーリーを漫画の中で扱うとき、当時、諸星の作品ぐらいしか、先導するものが無かったからだ。

だが、似たテーマを扱いながらも、この両者の作品の印象は大きく異なる。
諸星は怪異譚であり、星野は伝奇譚なのだ。

魔物の物語と、超常現象の物語。
似たテーマの似た漫画だが、その違いは明白であり、その対象性は際立っている。

二人に高橋葉介を加えると、対比がより明確になる。
葉介や諸星の持つおどろおどろしさを、星野は持たない。
超常現象や太古を扱いながらも、常に肉体的であり、生きている者の側に星野は居る。

おそらく宗像教授には、インディー・ジョーンズの血も流れている。

リリース: 
1990年

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