伊藤三巳華 - 視えるんです。
霊が視える人がいる。
嘘か本当かは分からないが、少なくとも彼女本人は「視えている」と思っているようだ。
そして、それでそれなりに「つじつま」が合ってしまう。
そして、彼女にとって、霊は必ずしも恐ろしいものではない。
その一方で、霊などいない、と断言する人もいる。
どちらが正しいかは分からない。
私は不思議な体験をしたことがあるし、知人にもかつて視えていた人がいる。
だから私は、一概に否定はできないと思っている。
かといって私には、「霊を視た」と断言できる体験は無い。
おそらくは、死んでみるまで分からないことなのだろう。
ともあれ。
彼女は霊を視るらしい。
そして、視えることを前提に、その体験談をコミック・エッセイにまとめている。
それがこの本だ。
この手の本はこれまでもあったが、この本は珍しい特徴を持っている。
絵が可愛いのだ。
霊が登場するシーンは、やはりそれなりに怖いのだが、全体的に絵が可愛らしく、キャラクターグッツ化できそうな雰囲気である。
そして、この本に登場する霊は、人を呪っているような悪霊とは違うようだ。
いや、もしかしたら、遭遇した人の対応によっては、おぞましい悪霊と化したのかもしれないが、少なくとも彼女は、大きな被害には遭わずに済んでいる。
この本を読む限り、彼女は慎重だし、霊に対しても、常に礼節をわきまえている。
だから霊に遭っても、大きな危険を避けられているのかもしれない。
必要以上に怖がらせたい本ではないことが、彼女なりの誠意なのだろうと思う。
その誠意は、読者に向けられたものであり、同時に、霊に向けられたものだろう。
怖がらせたいのではなく、ただ視えることを伝えたい。
彼女のそのスタンスは、私には好ましいものと思える。