Kraftwerk - The Robots
この曲を始めて聴いた時のショックは忘れられない。
それは私にとって、楽器の概念を覆された瞬間だった。
それは、いわゆるハートフルな演奏など無くても、素晴らしい音楽は成立するのだという事実を知らされた瞬間だった。
いわゆるテクノの走りであり、コンピュータやシンセサイザーを使った音楽である。
クラフトワークの凄い点は、一度プログラミングしてしまえば、人の関与の必要も無く、高度な演奏テクニックも不要な音楽を、高度なテクニックを駆使した音楽と同じレベルで成立させたことだ。
必要なのは、ただ、音楽のセンスだけである。
機械による演奏、ロボットによる演奏。
ただ自動的に、予め決められた順番で、音が並ぶだけの音楽。
にも関わらず、そのベースの音は、なんと小気味よいことか。
そのメロディーの音は、なんと美しいことか。
ロボットのように加工された声は、なんと魅力的なことか。
もちろん、これを成立させるためには、とんでもなく鋭い感性と、半端なく根気の要る作業が必要だ。
事実、このアルバムに至るまでの彼らのアルバムは、実験的な野心に満ちている割に、はっきり言って退屈なものだった。
面白い音楽ではあっても、独特な心地良さはあっても、それでも、繰り返し何度も聴ける音楽とは言えなかった。
だが、このアルバム「The Man Machine」は、何度繰り返し聴いたか分からない。
それほどに洗練された、磨かれた音だった。
少しだけ、補足しておかねばならない。
この時代に存在したコンピューターは、まだ原始的な、言わばファミコン程度のもので、MIDIという、コンピュータを使った楽器制御技術も存在しなかった。
シンセザイザーも、音色をプリセットから選べるようなものは無かった。
彼らは一つ一つの音色を、まさに手探りで、感性だけを頼りに、組み立てていったのだ。
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