西原理恵子 - はれた日は学校をやすんで

7月 10 2013

嫌な女である。
目を背けたくなるような残酷な物語を、あっけらかんと描きやがる。
そのくせその眼差しは、天使のように優しいのだ。

人が身勝手で残酷であることを、彼女は良く知っている。
そして同時に、残酷な人にもやさしい面があることも、いやむしろ、やさしい人だからこそ、過酷な生活の中では残酷に成れる(馴れる)ことを、彼女は良く知っているのだ。

彼女の絵は稚拙である。
ややこしいものは描けない。
けれど、線が美しい。

彼女の色は単純である。
微妙な色は滅多に使わない。
しかし、海や空、夕焼けの色はいつも端麗で懐かしい。

なんと非常識な漫画家だろう。
皆が「巧い絵を描きたい」っと思っているのに、彼女だけは「これで十分」と思っているのだ。
そして、本当に、それで十分なのである。

彼女の残酷な描写に目を背ける人は少なくないだろう。
そのような残酷な日々を、私も肯定したくない。
わざわざそんなものを見たくない。

その一方で、見なくてはならないと思う自分もいる。

彼女のマンガを読むとき、辛いと思う自分と、楽しみに思う自分が、常に隣り合わせている。

リリース: 
1995年

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