森下裕美 - 大阪ハムレット

8月 30 2013

恋愛や愛情、そして様々な人間関係を描いた短編マンガ集。
時に笑いを、悲しみを、愛憎を描く彼女の視点は、常に大変厳しく、同時に、とても情が深い。
厳しく突き放しながらも、あんたは一人だけとちゃうでと、森下はきちんと見守っている。

それは彼女が、人とは滑稽で、情けなくて、かっこ悪いものだと分かっているからだ。

嫉妬したり、悩んだり、素直になれなかったり、気弱になったり、つい騙そうとしてしまったり、そういう欠点だらけの人間を、そのまま受け入れているからだ。

このマンガの登場人物は、その大半が、薄幸な人生を送っている。
理想とは異なる人生の中で、苦悩し、もがいている。
美人美女も、常にどこか弱かったり、強く悩んでいたりする。

そうした苦悩の物語だから「ハムレット」なのだろう。

けれど、その厳しい人生の中、その厳しさの隙間から、やわらかな希望を見つけられる、そういう物語が、この本にはたくさん詰まっている。
テーマはハムレットだが、決してバッドエンドではない物語が。

森下の絵は、硬質の線で、構図に隙が無い。
だが、その登場人物たちは、とても人間臭い。
しかも、不細工だったり、情けなかったり、その描き方は容赦が無い。
だが、その容赦の無さの向こうに、優しい視線が垣間見える。

人の苦悩や醜さ、嫉妬や恨みを、これだけ突き放しつつ、愛情深く描ける作家は、そうはいないと私は思う。

リリース: 
2005年

enlightened私も好き♪/嫌い」への投票は、ユーザー登録なしでもできるようになっています。
ただし、トップページのように、本文の一部しか表示されていない場所では投票できません。
タイトルもしくは「この続きを読む」をクリックして、全文を表示させてから投票してください。
投票は、実際に視聴したことのある作品に対してのみ行うようにしてください。
ユーザー登録なしでの投票は、通常、約24時間後に反映されます。