山本貴嗣 - SABER CATS

8月 5 2013

映画やマンガでは、アクションは派手な方が見栄えがいい。
しかし、派手な動きは、むしろ敵に悟られやすく、真の武術とは言えないだろう。
優れた武術は、むしろ静であり、最小限の動きで最大限の効果を上げる。
力に頼る時点で、武術の真髄からは離れてしまう。
だが果たして、そのような「本物の武術」を、マンガで表現できるのか。

作品の物語そのものは、およそStar Warsの影響下にある。
宇宙時代のテクノロジーと、古代から続く武術。
卑怯な手段によって武術の真髄を強引に集めようとする者と、真の武術体現者との戦いが、この物語の核である。
縁や友情、家族の繋がりによって、その戦いは複雑に、その物語は濃厚なものになっているが、ここではストーリーについては、これ以上触れない。

この作品の凄さは、武術の描き方への拘りである。

ただ派手に見えるアクションでは、このテーマに切り込めない。
本当の武術とは、力学や、人間の構造や動きを熟知することで、そして的確な技と最小限の力によって、相手を倒すものであるべきだ。
動きは小さく、流れるようであり、不要な動きも不要な力も使わない。
ならば、敵にも周囲にも悟られないような、僅かな動きこそが望ましい。

だが、これを表現して、迫力のある絵に出来るだろうか。
もちろん地味な絵では、マンガとしての緊張感すら持続できない。

より正確な本物の動きを的確に描くことで、その絵としての弱さを克服できないか。
だが、そのためには、「本物の動き」を、作者が理解していなければならない。
いい加減な動き、ましてや出鱈目な動きでは許されない…。

武術を本気で習い、教えを請い、その理解を元に、アクションを組み立てる。
普通の漫画家に出来ることではないだろう。
だが、彼はこれに挑戦した。

難しい挑戦だが、一定の高みを極めた作品となっているように、私には思える。

リリース: 
1990年

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