佐々木倫子 - 動物のお医者さん

7月 13 2013

獣医学科で学ぶ大学生たちと、少々憎たらしくも愛らしい動物たち、そして変人の教授のドラマである。

動物たちの描き方が断トツに素晴らしい。
動物個体それぞれにしっかり個性が与えられており、その動物と人間との関係も実に細やかに描き分けられている。

その動物たちに振り回され、更に変人の教授に振り回される生徒たちはなかなかに悲惨なのだが、たいてい結局は、動物たちの愛くるしさに、あるいは教授の強引さに丸め込まれてしまう。
本人たちにはやるせない限りであろうが、なんともおかしい。

基本的に一話ごとに完結する短編集だが、主要な登場人物、登場動物のほぼ全てに名前が付けられており、それぞれが以前の話の延長上に存在していることが分かる。
それぞれの日常や生活が十分予想できてしまう。
そのためか、読んでいると、つい自分も一緒に学生生活を送っているような気持ちになってしまう。

ギャグマンガでいて、ここまでリアルに共感できるものはかなり珍しいと思う。
それは、もともと現実の中にある笑いを、丁寧に膨らませているからだろう。
作者の人間観察、動物観察の細やかさがあって、初めて成立するマンガなのである。

私は特に、院生の菱沼女史と漆原教授のキャラクターが好きだ。
こういう変人は、ぜひ無形記念物として保護しておきたい。
こういう突拍子の無い人物が存在することは、はた迷惑ではあるが、なんと豊かな人生だろう。
そのくせ、案外その辺にいそうにも思えてしまう。

このマンガのヒットで、北大受験生が大々的に増えたという。
これを読むと、皆、動物たちに振り回されたくって仕方なくなるのだ。

リリース: 
1987年

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