みなもと太郎 - レ・ミゼラブル
ビクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」のコミック化作品。
全編にギャグが散りばめられているにも関わらず、また、一見手抜きと思われるほどの画風にも関わらず、原作のシリアスなストーリー性を全く損なっていない。
むしろ登場人物たちの情熱や悲哀が迫ってくる。
原作は1862年の作品であり、フランス革命を背景に、法とは何か、人権とはどうあるべきか、正しいことを成すために、人は何をすべきなのかを、ユゴーは作品の中で問い質していく。
主人公は僅かの罪によって罪人となり、冷たい世間を呪い、生き抜くためにまた罪を重ねることを選択しようとしていた。
しかし彼は、彼の魂を信じてくれる人に出会い、罪を重ねようとした事を恥じる。
彼は心を入れ替え、過去を捨てることを決意する。
時は過ぎ、名を変えた彼は、成功を収めていた。
貧しい人々を助けるために、彼は様々な助力を行っていた。
幼い少女コゼットを助けた彼は、彼女を孫のように可愛がり育てた。
だが、彼の汚れた過去を追う者はいた…。
みなもと氏がこれを描いたのは1973年だ。
少年マガジンの「ホモホモ7(1970年)」で一部読者から熱烈な歓迎を受け、少女フレンドの「ふたりは恋人(1971年)」で大ブレークした後、彼はこうした名作の漫画化に手を付け始める。
重たいテーマにいとも軽々とギャグを詰め込んだ氏の構成力に、私は今も最大限の賛辞を惜しまない。